エンゲージメントノウハウ

なぜ、日本で働く人のエンゲージメントが低いのか そしてなぜ、若者は転職を繰り返すのかを知る

 

日本はエンゲージメントが最低レベル?

何故、日本企業はエンゲージメントが低いのでしょうか。日本は139カ国中132位と最下位レベル。とても悲しい問題ですし、とても深刻な問題です。
組織のエンゲージメントを測るツールとして、米国のギャラップ社が実施している「エンゲージメント・サーベイ」があります。ギャラップ社は米国最大の調査会社で、その膨大な調査データの集計・分析をもとに組織開発のコンサルティングも行っています。

ギャラップ社は全世界約1300万人のビジネスマンを調査し、導き出したエンゲージメントを測定する12の質問が「Q12(キュー・トゥエルブ)」。この調査によると、日本企業はエンゲージメントの高い「熱意溢れる社員」の割合がたった6%で、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位レベルでした。さらに言うと、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%。「やる気のない社員」はなんと70%に達しています。参考までですが、世界でも87%の従業員が職場にエンゲージメントを感じていなく、全世界でもやる気をもって、会社のビジョンを理解し、その上で自分の責任や役割を全うしようという前向きな気持ちや行動を取っている従業員はなんと13%という結果も出ています。

改めて何故、日本はエンゲージメントが低いという結果が出てしまうのでしょうか?
色々な理由が考えられますが、1つとして日本という国が裕福で、仕事に対してのモチベーションやハングリー精神が下がったことも問題なのではと感じています。高度経済成長期の日本は、皆が一致団結して「欧米に追い付け!追い越せ」と目標に向かって努力するフィールドがあり、皆が裕福になりたいと必死だったように感じます。日本社会全体が、戦後の焼け野原から立ち上がり、豊かさを求めて頑張るという志に満ちていたのではないでしょうか。
しかもそのがんばりは着実に成果をもたらし、人々の暮らしがどんどん良くなっていった。日本国全体が、エンゲージメントが高い状態になっていたと言えるでしょう。そのような強いエンゲージメントこそが日本の高度経済成長期を支えたのだと考えられます。しかし残念ながら、その成功体験が強烈だったのでしょうか。世界一のモノづくり。メイドインジャパンとブランド化された日本の産業は、アジア諸国の著しい成長や環境変化に対応できませんでした。過去の成功体験が手放せず、変化できない組織がグローバル競争の中で取り残されていきました。ただ、その中でそれを危惧し、危機感を覚えている人材はほとんどいません。また、お金や欲を求めなくても幸せで楽しく過ごせる世の中となり、兄弟でテレビを取り合ったり、ファミコンを取り合ったりする時代から、スマホが一人一台。小学生からスマホを持ち、見たい時にテレビや映画やYOUTUBEで色々な動画をみて、ファミコンやゲームを買わなくてもアプリで遊べる時代になりました。そんな裕福さを簡単に手に入れてしまえる今だからこそ、かつては国も企業も個人も裕福になる為、必死だった日本。世界トップクラスだったかもしれないエンゲージメントが、世界最低レベルにまで弱まってしまったのだと考えられます。

働く20代が何故転職を繰り返すのか。

まず、従来の終身雇用が崩壊し、若い世代の転職への抵抗がなくなってきました。
しかしヘッドハンティングや本当にキャリアステップとしてキャリアアップの転職はごく一部なのにも関わらず、転職する=キャリアステップのような錯覚や誤解も横行し、転職がとても身近でフランクなものとなりました。しかも少子化が進み、20代の雇用確保が更に激化する中、20代を自社で育て、定着、活躍させる重要性が増してきました。そこで改めて20代がなぜ転職を続けるてしまうのかエンゲージメントとの関係性の前に調査結果を調べてみました。

20代の退職事情

厚生労働省「平成29年雇用動向調査結果の概況」」によると、平成29年に退職した正社員は約438万人です。離職者は、産業別で、宿泊・飲食サービス業が約144万人で最も多く、続いて多いのが製造業が約94万人です。一方、卸売業、小売業が約48万人減と最も減少幅が大きく続いて、学術研究、専門・技術サービス業が約47万人減となっています。離職者数は、卸売業、小売業が約67万人増と最も増加幅が大きく、続いて宿泊業、飲食サービス業が64万人増となっており、一方製造業が約184万人減と最も減少幅が大きく次いで教育、学習支援業が約31万人減となっています。

またこちらは、厚生労働省の「平成27年雇用動向調査結果の概況」」によると、年齢別の退職率は20?24歳が男女平均26.6%、25?29歳が21.1%と、退職率がとても高くなっています。

20歳から29歳の転職者が前職を辞めた理由としては、労働時間や休日などの労働条件が悪かった(約21.3%)、給与が少ない(約11.7%)が多くなっていますが、他の年代と比較して比率が多いのは「仕事内容に興味を持てなかった」で約11.9%となっています。昨今は年齢を問わず転職が増えていますが、20代の退職者が多い理由としては、データから推察すると、給与、休み、労働時間、理想と現実の仕事のギャップが推測されます。

また改めて皆さんは、ご自身が勤める会社の離職率、ご存じですか? 離職率はもちろん低いことが全てではないですが、
活躍している人材が離職している場合は注意が必要です。また業界や企業の成長性や考え方によっても、大きく異なるため数字だけで判断は難しいのですが、一般的に離職率が高くなる理由は、データから見ても給与、休み、労働時間などが多いと考えれます。

ただ、ではこれらを解決するために給与UPや、労働時間を短縮すれば、離職率は確実に減るものなのでしょうか。給与や賞与、休日や労働時間が 不満足を予防する役目はあるが、満たせば満たすほどより多くを望むようになる。ハーズバーグの動機付け要因、衛生要因(●P)
従業員の一時的モチベーションになることもありますが、決してそれが解決策ではないので、離職率が減ることには必ずしも直結はしないと思います。職場への愛着や絆を感じることで、「仕事に対し熱中する」。少し精神論になってしまうかもしれませんが、仕事にワクワクをする。「この会社で働きたい」「長く働き続けたい」と仕事にやりがいを感じ、会社の成長と個人の成長を連動させて能動的に会社に貢献しようとする従業員が増えるのではないでしょうか。
これぞまさに従業員エンゲージメントが高い状態です。それがサービスの品質向上、顧客満足、売上アップ、アイディアが積極的に出る状態です。更には雇用・教育コストの削減、そして定着率アップにつながります。

働き方改革の誤解とブラック企業とは必ずしも悪いのか

企業の定着やエンゲージメントを語る本でまさかブラック企業という活字が登場するとは正直私も思いませんでしたが、本当の意味での働き方改革の意味合いもご理解頂く為に、1度触れておきたいと思います。
そもそもブラック企業の歴史は意外と長いようで、1980年代には、ブラック企業に当てはまる条件の企業はあったようです。一般的な言葉として定着したのは、バブル崩壊後。バブル崩壊したのが1991年のことで、企業の収益が激減し、コスト削減や人的カットが強くなったことも背景にあると思います。

企業は収益をあげる苦肉の策として過度な業務量を与え、今まで残業でなんとか完了させた仕事が、急に残業なしで回るわけがないとサービス残業が増え、深夜までの長期労働、休日返上も当たり前になって、やがて「働き過ぎによる疲労蓄積が原因で死亡する」「過労死」が「Karoushi」という国際的な共通語になるほど大きな社会問題になった。そんな時代背景の中で生まれた映画が、2009年に公開された「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」という映画です。

ただ、ブラック企業は「ブラック企業」という言葉が生まれる前からあったそうですが、かつては「企業戦士」「モーレツ社員」と呼ばれ1960年代に働き盛りだった世代の経験者によると、「帰宅できるのは週に1度あれば良い方」「残業が終わった午前1時から会議があった」「会社に泊まり込むのは当たり前だった」「子供の寝顔しか見たことがない」など、凄まじい話ばかりだ。ただそんなビジネスマンのことを、当時は「企業戦士」とか「モーレツ社員」と呼んで、むしろ賞賛していたのである。

そこには、戦後の混乱期を抜けて、これから経済が上向いて行くという希望が見えていたからではないか。イコール国として成長していきたい、会社として成長していきたい。そのビジョンに賛同し、自分の責任と職責を全うしたまさにエンゲージメントが高い状態だったからこそ、「企業戦士」とか「モーレツ社員」と呼んで、むしろ賞賛したのだと思います。
もちろん私は長期労働も休日返上した勤務も望んではいない。ただ、エンゲージメントが高い状態で長期労働している人を果たしてブラック企業で働いている(ブラックワーカー)と呼ぶのだろうか。反対に一般的なビジネスマンより活躍し、大きな成果(給与と待遇、地位、名誉)を掴んだ人なんて、基本長時間勤務当たり前、休日返上当たり前で頑張ってきた人ばかりなんだと思います。ただ、そこには、高い志を持って、自分の成長の為、組織の成長の為に前向きに仕事をしている人と、ただ、働かされているという(ブラックワーカー)では、待遇は一緒でも捉え方や環境によって大きな差が生まれているように感じます。

反対に、最近は働き方改革といった一見耳障りのよい言葉がニュースはもちろん組織の現場からも良く聞かれます。生産性を落とさず、むしろ高めながら働き方改革を行っていくのは理解できますが、むしろ生産性の向上という視点もなく、長期労働、長期勤務を単に是正するというは少し疑問が残ります。なぜなら、労働時間が長くてもエンゲージメントの高い人たちも存在します。起業家や経営層、幹部層には長時間労働の人は少なくありません。ベンチャー企業や高い志とビジョンに人材が共感している企業では、時間を忘れて仕事に没頭するような、意欲あふれる若者が活躍しています。このような人たちにとって、健康を害さない程度の長時間労働は必ずしも悪ではありません。

これは、彼らの仕事や組織に対するエンゲージメントが高いからです。「働き方改革」が「長時間労働の抑制」になってしまうと、このビジネスリーダー層の人たちの働き方が制約されるリスクがあります。改革がかえって働く喜びや働きがいを奪い取ってしまっては、本末転倒です。また、ブラック企業で勤める人たちにおいても、本当にその会社が嫌であれば、自らが熱量を持ってその会社を改善するか、あるいは自分がやりがいや職責を感じられる職場に自ら行動をすれば良いだけの話しで、実は問題はその企業でい続けてしまうエンゲージメントの低さにも問題があります。エンゲージメントの低い状態を放置してキレイな言葉だけで労働時間の短縮を行うだけでは、企業成長や日本経済にプラスの影響は生まれないと思います。

給与・福利厚生はバランスが大切

経営者の方は、常に社員さんの給与や福利厚生について考える機会が多いのではと思います。もちろん、理想は無限大に給与や福利厚生を高められることができたら、それに越したことはないですが、会社の収益とのバランスや、個人それぞれの成果に対して左右しますので、とても難しい課題かと思います。その上で、給与・福利厚生によって、社員が満足感を得たり、不満に思ったりすることを想定し、理解する上での理論をここで紹介したいと思います。アメリカの心理学者ハーズ・バーグ氏が提唱した仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する理論です。この理論を理解すると給与や福利厚生のバランスがとても重要であることも理解できると思いますので、先にご説明させて頂きます。ハーズ・バーグ氏は人間の基本的欲求を「動機付け(モチベーション)要因」と「衛生(ハイジーン)要因」に分類して人間の行動心理を分析しました。動機付け要因とは仕事において満足を与える要因で、衛生要因とは仕事において満足を与えない要因です。

以下2種類を詳しく説明していきます。

動機付け(モチベーション)要因・・・成果を出した時の達成感や充実感。やり遂げたことへの承認、任せられている実感など、職場・仕事への満足が生まれ、長期的な活躍・定着に繋がります。仕事の満足感を引き出すには「動機付け(モチベーション)要因」にアプローチしなくてはいけないということです。

衛生(ハイジーン)要因・・・ 不満足を予防する役目はありますが、こちらを満たせば満たすほどより社員は多くを望むようになります。業界・職種平均かそれ以上は会社として目指しつつも、給与・福利厚生などに当たるものは、増えれば増えるほど、従業員の満足感が高まる気がしますが、満足感を引き出すことには繋がらず、不満足感を減少させる効果でしかないのです。つまり、仕事の満足感を引き起こす要因と不満を引き起こす要因は違います。不満要因(衛生要因)をいくら取り除いても、満足感を引き出すことには繋がらず、不満足感を減少させる効果でしかありません。