エンゲージメントノウハウ

徹底実践、エンゲージメントアップ4

⑥理念・ビジョン

  • 会社の社会的意義を全力で伝える

既存社員へのエンゲージメントアップと未来の社員(求職者)に向けて、近年、重要になっているのが会社の社会的意義を伝えることです。特に東日本大震災が起こった2011年以降、学生の就職観に、人の役に立ちたいとか社会貢献といった社会へのインパクトを重視する風潮があると私は感じています。

社会的意義と聞くと、少し難しくピンとこないかもしれないですが、要は企業またはその組織に所属している人々が何のために存在しているのかということです。ビジョンは企業が外部へ発信する「こうありたい」と目指す目標や志であれば、社会的意義はビジョンを実現するために果たさなければいけない使命や目的のことです。

使命や目的を持つことが人のエンゲージメントにどれくらい違いを与えるのかを分かりやすく示したものに、イソップ寓話「3人のレンガ職人」があります。

 

<3人のレンガ職人の話>

旅人が、ある町外れを歩いていると、一人の男が道の脇でレンガを積んでいた。旅人はその男のそばに立ち止まって、

「何をしているのですか?」と尋ねた。

「レンガ積みに決まっているだろ。毎日毎日、朝から晩まで、やらなきゃいけないんだよ。暑い日、寒い日、風の強い日も、ずっと休みなし。手はこんなになっちまった」

男はひび割れた掌を見せ、その顔は、こんなことやらされてと訴えかけていた。

旅人は男に「きっといいことだってあるよ」と慰めの言葉を残し、歩みを進めた。

さらに歩くと、一生懸命レンガを積んでいる男がいた。旅人は尋ねた。

「何をしているのですか?」

「大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事さ」

「大変な仕事ですね」と、旅人が言葉をかけると、

「なんでもないさ。この仕事のおかげで家族を養っていけるんだ。このへんは仕事を見つけるのさえ大変なのに俺は家族を食べさせていけているんだから、ありがたいよ」

旅人は、男に「がんばって」と励ましの言葉を残して、歩き続けた。

すると今度は、楽しそうにレンガを積んでいるところに遭遇した。

「ここで何をしているのですか?」

思わず旅人は、興味深く尋ねてみた。

「ああ、俺達かい?大聖堂を造っているんだよ」

「それは大変ですね」と、旅人は労いの言葉をかけた。

「とんでもない。この歴史に残る偉大な大聖堂で人々が祝福を受け、悲しみを払う。その素晴らしいものを、俺たちが造っているんだぜ!」

旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また歩き続けたのだった。

 

  • 目的意識がない人に意識を持たせるためにできること

3人のレンガ職人への「何をしているか」の問いかけに対する答えから、次のようなことが分かります。

1番目のレンガ職人:「レンガ積みに決まっているだろ」→目的なし。作業

2番目のレンガ職人:「この仕事で俺は家族を養っていける」→生活費を稼ぐのが目的

3番目のレンガ職人:「歴史に残る偉大な大聖堂を造っている」→後世に残る事業に加わり、世の中に貢献することが目的

この中で一番エンゲージメント高く仕事をしているのは、明らかに3番目の職人です。目的がしっかりしていて、その目的を果たすためにどのような貢献ができるのかを自分で考えるからこそ、より良い仕事をしようとその仕事に積極的に関わる姿勢が生まれます。

では、やらされている感のある1番目の職人や、仕方なく生活のために働いている2番目の職人のような従業員の目的意識を高めるにはどうしたらよいのでしょうか?それにはまず、企業の目標・志・ビジョンを明確にし、社内の勉強会や社内報でそれを徹底的に落とし込み、ビジョン達成のための模範的行動を称える表彰式制度の導入や、理念共感する人財の採用などを行うことが必要だと思います。

他にも、やりがいや責任を与え、権限委譲をすることも、目的意識の向上に効果的です。なぜなら、自分の考えが必要とされることで「やらされ仕事」が「自分の仕事」に変わり、仕事に価値を見出すことができるようになるからです。こういった企業文化があってはじめて、ビジョン実現のための使命・目的・役割・存在意義などを自ら考え、行動に移すことができるエンゲージメントの高い人財を育てることができるのではないでしょうか。

 

  • 理念・ビジョンを浸透させる5ステップ、5ポイント

従来、理念浸透の方法といえば、朝礼での理念の唱和などが色々な会社で古くから行われてきました。日常的に行われているものの従業員が受動的で、理念を能動的に捉え、楽しく取り組むのにはかけ離れています。CREDOカードの作成や社員に携帯させるのもそれと変わりません。カッコいいデザインで作るのはいいものの、社員はそれを一方的に渡されただけで、理念が日常的かつ能動的なものとなるのには、かなりかけ離れています。

 

理念浸透は次の5つのステップで行われます。

「理念共感」した人材が入社し、「理念を実際に理解する」。そして理解したものを「実践」し、実践し続けたことが「賞賛」される。賞賛されて自信となり、自分の体験として「人に説く」ことができる。

この流れを社内に作り出していくことが重要です。それにはもちろん色々な方法があり、進め方があると思いますが、どの会社でも簡単にできる5つのポイントがあります。

社員やアルバイトが常に理念や行動指針に対して、

・日常的であること

・社員やアルバイトスタッフが能動的に行うこと

・一方通行ではなく双方向に行うこと

・楽しみながら行うこと

・コミュニケーションが他のメンバーにも見える化されていること

これらが実践されていると、理念は働くメンバーにとってより身近なものとなります。社内SNSを活用し、お互いの行動や成果を賞賛し合うことを通じて理念浸透を図る。理念は飾るものではなく、最終的には、皆が周りに語れるくらい身近で当たり前化するものとなることをめざしましょう。